【PFSOZ】月の咆哮【欺瞞の悪魔】
クレムはふと、空を見上げる。
どこからともなく、ワイバーンの群れがやってきている。
クレムには、それらが”敵意と悪意”に満ちている事がすぐに分かった。
『まずはアレを、なんとかしなければ。』
クレムはその場で倒れるようにしゃがみ込んだかと思うと、バキバキと音を立てながら黒い鱗に包まれていく。
やがて完全に竜の姿になったクレムは、一気に上空へと舞い上がる。
『その姿は聖竜と呼ぶにはあまりにも、禍々しかった。
遠い遠い故郷。そこで美しい白い鱗を纏い生まれてきた彼女もまた、聖竜の筈だった。
しかし、彼女は成長していく度に白かったはずの鱗の殆どは黒く染まり行き、尖り、禍々しく変化し、身体も他の聖竜よりも一回り大きく、牙も爪も鋭くなってしまった。
時々、あるらしいのだ、こういうことが。
魔力を宿し、その力に汚染され黒く染まりゆく聖竜のなり損ないになる事が。
”厄災を招く”と云われる忌み子の竜が、誕生する事が。
彼女は今まで、その事をずっとコンプレックスに感じながら生きていた。
きっと、今だってそう。自分の正体を、誰よりも嫌っている。
しかし― 』
ワイバーン達が一斉に襲いかかってくる。
『しかし今の彼女は、その事を受け入れていた。』
クレムはその巨体からは想像できないような速さで飛び立ち、ワイバーン達の間を縫うようにして飛行する。
そしてすれ違い様に、その鋭い鉤爪で次々と切り裂き、噛みつき、撃ち落とす。
『何故なら』
鱗が割れても、血が流れようとも、痛みすら感じていないかのように”感情”のままワイバーンを撃ち落とし続ける。
『竜ではなく、ヒトではなく、”自分は自分である”と、ようやく気づき、受け入れられたからであり、
”どんな姿になってでも、守りたいモノができたからだ。』
ぐらりと視界が歪む。一匹のワイバーンがクレムの翼の付け根に食らいついたのだ。
「ッ!」
バランスが崩れる。高度が落ち始める。
このままでは地面に叩きつけられる。
その時、自分と関わってくれた人々を脳裏に思い浮かぶ。
楽しかった、大変だった、嬉しかった、幸せだった。様々な思い出が満ちていき、彼女の力になっていく。
《落とされてたまるものか》
クレムは翼を振り回しながら、なんとか体勢を立て直す。
『彼女は、初めて己の意思で、”クレム”として、戦った。』
クレムは再び高く舞い上がり、咆哮をあげる。
その姿はまるで、”月が咆えているようだった。”
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◆自キャラ
クレム=マーガレス
人間形態『illust/101969158』
衣装『illust/103613349』
竜形態『illust/102455088』
※竜形態の見た目はどう見ても敵っぽいですけど中身は優しい子です…!(
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PFSOZ最終章「ゼラルディアの王笏」『illust/103584939』
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※キャプション編集中です。
何か問題等ございましたらメッセージでお知らせしてくださったら嬉しいです。
どこからともなく、ワイバーンの群れがやってきている。
クレムには、それらが”敵意と悪意”に満ちている事がすぐに分かった。
『まずはアレを、なんとかしなければ。』
クレムはその場で倒れるようにしゃがみ込んだかと思うと、バキバキと音を立てながら黒い鱗に包まれていく。
やがて完全に竜の姿になったクレムは、一気に上空へと舞い上がる。
『その姿は聖竜と呼ぶにはあまりにも、禍々しかった。
遠い遠い故郷。そこで美しい白い鱗を纏い生まれてきた彼女もまた、聖竜の筈だった。
しかし、彼女は成長していく度に白かったはずの鱗の殆どは黒く染まり行き、尖り、禍々しく変化し、身体も他の聖竜よりも一回り大きく、牙も爪も鋭くなってしまった。
時々、あるらしいのだ、こういうことが。
魔力を宿し、その力に汚染され黒く染まりゆく聖竜のなり損ないになる事が。
”厄災を招く”と云われる忌み子の竜が、誕生する事が。
彼女は今まで、その事をずっとコンプレックスに感じながら生きていた。
きっと、今だってそう。自分の正体を、誰よりも嫌っている。
しかし― 』
ワイバーン達が一斉に襲いかかってくる。
『しかし今の彼女は、その事を受け入れていた。』
クレムはその巨体からは想像できないような速さで飛び立ち、ワイバーン達の間を縫うようにして飛行する。
そしてすれ違い様に、その鋭い鉤爪で次々と切り裂き、噛みつき、撃ち落とす。
『何故なら』
鱗が割れても、血が流れようとも、痛みすら感じていないかのように”感情”のままワイバーンを撃ち落とし続ける。
『竜ではなく、ヒトではなく、”自分は自分である”と、ようやく気づき、受け入れられたからであり、
”どんな姿になってでも、守りたいモノができたからだ。』
ぐらりと視界が歪む。一匹のワイバーンがクレムの翼の付け根に食らいついたのだ。
「ッ!」
バランスが崩れる。高度が落ち始める。
このままでは地面に叩きつけられる。
その時、自分と関わってくれた人々を脳裏に思い浮かぶ。
楽しかった、大変だった、嬉しかった、幸せだった。様々な思い出が満ちていき、彼女の力になっていく。
《落とされてたまるものか》
クレムは翼を振り回しながら、なんとか体勢を立て直す。
『彼女は、初めて己の意思で、”クレム”として、戦った。』
クレムは再び高く舞い上がり、咆哮をあげる。
その姿はまるで、”月が咆えているようだった。”
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◆自キャラ
クレム=マーガレス
人間形態『illust/101969158』
衣装『illust/103613349』
竜形態『illust/102455088』
※竜形態の見た目はどう見ても敵っぽいですけど中身は優しい子です…!(
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PFSOZ最終章「ゼラルディアの王笏」『illust/103584939』
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※キャプション編集中です。
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2022-12-15 11:40
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