【PFSOZ】暖かい人へ【アラディア院】
避難誘導の途中、生徒の言葉が耳に入る。
「七不思議の怪物が出たぞ」
「噂通りの悍ましい奴だった」
「雪の怪物、ジャック・オ・フロスト!」
知っている、そんな呼ばれ方を……あまつさえ、そんな名前を研究者達に押し付けられた、子供を一人。
「君たち、少しいいかな。……その子を、何処で見たんだ。言いなさい」
こちらに気圧されたのか、やや大人しくなった彼らが告げた方角へ、棒切れの脚で必死に駆けた。せめて予感が、当たっていなければと願いながら。
── そして、結果として嫌な予感は当たってしまった。
様子がおかしい。おかしいのだ。王都全体に満ちる嫌な気配が、魔力が、一際強く周囲を満たしている。
(何か魔法的な干渉が、かかっている……?)
「君、フロスト君だろう…落ち着いて、何があったのか…」
「来るな!」
冷気が襲い、すぐそばに氷の壁が出来上がる。咄嗟に身構えた体には、擦りもしない。
「やめろ、触るな、近付くな」
声が微かに震えているが、身体は微動だにしない。
氷の壁を壊すために蔓を振るうが、氷の塊から湧き出した冷気が蔓を凍らせ、ボロボロと表面が剥がれてしまう。
いつも使っている蔓では、これ以上近づくのは難しいかもしれない。
「本当は、ちゃんと完成させて、ちゃんと育ててから見せようと思っていたのだがね」
先日のフェイン君と『溢れ出た飢餓』の事件。冷気を操る彼を見て、この蔓では足りないかもしれないと持ち歩きはじめた、前々から作っていた種子の瓶を、ポケットから取り出した。
咲き誇った花に、彼の視線が微かに動くのを、私は見た。
ーーーーー
不都合あったらパラレルスルー、よろしくお願いします!なんとかなれーっ!!!!お花アタックで氷壁を崩します。声さえかけてもらえれば、一瞬「花の道」を作ることも可能かもしれません。シュローラン自身は、フロスト君を見失わないようにしつつ声をかけ続けます。ユルメックでの情報提供も行っておりますので、ここからフロスト君の情報を得られるはず…!(届け…!)
シュローラン、内心では焦っていますがフロスト君を怖がらせないよう出来るだけ穏やかーに喋ってます。出来るだけ……。
◾️参加させていただきます!
氷の怪物【illust/103615211】
◾️お借りしました!
フロスト君【illust/101968160】
雪亜麻【illust/102886138】
結星花【illust/102822448】
◾️シュローランの植物魔法
植物を種子の状態から急成長させたり、自在に動かしたり、大きさを肥大化させたり、強度を引き上げ物体を破壊したりできる魔法。生命体に掛ける魔法という意味では、支援魔法や回復魔法に近いが、自我を持ったもの(植物、動物、無機物問わず)にかけることはできない。
言ってしまえばこの魔法は負荷の強すぎる強化魔法であり、魔法が切れた瞬間植物が萎れ爛れ、最悪崩れてしまうほど負荷がかかる。食べられる植物は、当然味が大きく落ちてしまう。ただ成長させるだけならしばらく保つが、普通に咲かせたものより枯れるのはずっと早い。
このため、品種改良の際は日を分け数ヶ月かけて手を加える。そして、食べたり贈り物にする植物は、一から自然な速度で育てることが多いのだ。
彼が普段使用する蔓植物は、葉などを敢えて未発達にさせることで養分を蔓のみに絞り、魔力回路を増強して操作性を上げ、魔法負荷に強くなるよう品種改良をしたいわば「植物魔法用」植物である。環境破壊を防ぐため、増やした種から花を咲かせる能力そのものを奪っている。寒さにも火にもそれなりに強いが、限度はあった。
◾️シュローランの雪亜麻
北方原産の雪亜麻に魔法的な力で改良を加えたもの。見た目はあまり変化が無いが、冷気への耐性が引き上げられており、普通の雪亜麻なら凍ってしまうほどの冷気でも、暫く水気としなやかさを保つ。繊維や食用利用は考慮されていないため、一般的なものと比べると味が落ちる。青というより白かもしれない。
ーーーーー
「アザミ……花言葉は独立、報復、厳格、人間嫌い……あと、触れないで、か。分かっているよ、時々一人になりたい時はある。放っておいて欲しい時も。
でもね、ここではきっと良くないよ。君だって本当は、そうしたくないんだろう?」
凍った花が動き、氷を掻き分け砕き割る。凍った花を指先で弾くと、手袋の先を冷気が伝い、表面から氷が粉になって剥がれ落ちた。やや弱ってはいるが、まだ魔力が通る。完璧ではないが、……うまくいっているようだ。
「雪亜麻は冷気に強い花でね、それでもどこまで耐えられるのか不安だったから、手を加えていたんだよ。研究の面もあったけど、君に気兼ねなく触らせてあげたくて……冷気をうっかり強めてしまっても枯れないように、と……まあもう少し、改良がいるかもしれないな」
そうやって、笑ってみせる。
「君を冷たいという人がいる。確かに体は冷たいかもしれない。でもね、君の心は最初から暖かかったよ。不器用でも、君は優しい子だった。
人のように笑ったり泣いたりしない花を、枯れたらかわいそうだと言ってくれた。
何より、自分が傷付くのだって厭わず、何度だって人を助けていた。例え傷が治るものでも、誰かを想う暖かい心がなきゃ、そんなことをし続ける意味がない。
雪亜麻の花言葉は、『あなたに感謝します』……きっと君に感謝している人も、沢山いる。私だって、その一人だ。
……そして今だって、君は私に直に冷気をぶつけないでいてくれる」
制御しきれない冷気が地面を這い、義足が白く染まる。今は、脚が無くて良かったとさえ思う。
「……だからね、君に友達ができたと聞いた時【illust/103228738】、嬉しかったよ。君の優しさに、暖かさに気付いて、寄り添ってくれる人がいたんだって。ねぇ……君は、一人ではないよ。
友達の顔、関わった人たちの顔、どうか思い浮かべて欲しい。……一緒に避難しよう。フロスト君」
「……」
首に掛かったユルメック……通信機を手に取る。
「皆、聞こえているかい……事情はこれから説明するが、フロスト君を助けるために……救援が必要だ。協力してくれるかい?……できれば通信機を持っていない人にも、伝えて欲しいな」
警戒はしている、意識を完全に乗っ取られた時に、自分は備えなくてはならない。今現在、ここではあまりにも色々なことが起きすぎている。どれだけ人が集まるかも未知数だ。
それでも、彼を……どうにかして引き戻さなくては。
「七不思議の怪物が出たぞ」
「噂通りの悍ましい奴だった」
「雪の怪物、ジャック・オ・フロスト!」
知っている、そんな呼ばれ方を……あまつさえ、そんな名前を研究者達に押し付けられた、子供を一人。
「君たち、少しいいかな。……その子を、何処で見たんだ。言いなさい」
こちらに気圧されたのか、やや大人しくなった彼らが告げた方角へ、棒切れの脚で必死に駆けた。せめて予感が、当たっていなければと願いながら。
── そして、結果として嫌な予感は当たってしまった。
様子がおかしい。おかしいのだ。王都全体に満ちる嫌な気配が、魔力が、一際強く周囲を満たしている。
(何か魔法的な干渉が、かかっている……?)
「君、フロスト君だろう…落ち着いて、何があったのか…」
「来るな!」
冷気が襲い、すぐそばに氷の壁が出来上がる。咄嗟に身構えた体には、擦りもしない。
「やめろ、触るな、近付くな」
声が微かに震えているが、身体は微動だにしない。
氷の壁を壊すために蔓を振るうが、氷の塊から湧き出した冷気が蔓を凍らせ、ボロボロと表面が剥がれてしまう。
いつも使っている蔓では、これ以上近づくのは難しいかもしれない。
「本当は、ちゃんと完成させて、ちゃんと育ててから見せようと思っていたのだがね」
先日のフェイン君と『溢れ出た飢餓』の事件。冷気を操る彼を見て、この蔓では足りないかもしれないと持ち歩きはじめた、前々から作っていた種子の瓶を、ポケットから取り出した。
咲き誇った花に、彼の視線が微かに動くのを、私は見た。
ーーーーー
不都合あったらパラレルスルー、よろしくお願いします!なんとかなれーっ!!!!お花アタックで氷壁を崩します。声さえかけてもらえれば、一瞬「花の道」を作ることも可能かもしれません。シュローラン自身は、フロスト君を見失わないようにしつつ声をかけ続けます。ユルメックでの情報提供も行っておりますので、ここからフロスト君の情報を得られるはず…!(届け…!)
シュローラン、内心では焦っていますがフロスト君を怖がらせないよう出来るだけ穏やかーに喋ってます。出来るだけ……。
◾️参加させていただきます!
氷の怪物【illust/103615211】
◾️お借りしました!
フロスト君【illust/101968160】
雪亜麻【illust/102886138】
結星花【illust/102822448】
◾️シュローランの植物魔法
植物を種子の状態から急成長させたり、自在に動かしたり、大きさを肥大化させたり、強度を引き上げ物体を破壊したりできる魔法。生命体に掛ける魔法という意味では、支援魔法や回復魔法に近いが、自我を持ったもの(植物、動物、無機物問わず)にかけることはできない。
言ってしまえばこの魔法は負荷の強すぎる強化魔法であり、魔法が切れた瞬間植物が萎れ爛れ、最悪崩れてしまうほど負荷がかかる。食べられる植物は、当然味が大きく落ちてしまう。ただ成長させるだけならしばらく保つが、普通に咲かせたものより枯れるのはずっと早い。
このため、品種改良の際は日を分け数ヶ月かけて手を加える。そして、食べたり贈り物にする植物は、一から自然な速度で育てることが多いのだ。
彼が普段使用する蔓植物は、葉などを敢えて未発達にさせることで養分を蔓のみに絞り、魔力回路を増強して操作性を上げ、魔法負荷に強くなるよう品種改良をしたいわば「植物魔法用」植物である。環境破壊を防ぐため、増やした種から花を咲かせる能力そのものを奪っている。寒さにも火にもそれなりに強いが、限度はあった。
◾️シュローランの雪亜麻
北方原産の雪亜麻に魔法的な力で改良を加えたもの。見た目はあまり変化が無いが、冷気への耐性が引き上げられており、普通の雪亜麻なら凍ってしまうほどの冷気でも、暫く水気としなやかさを保つ。繊維や食用利用は考慮されていないため、一般的なものと比べると味が落ちる。青というより白かもしれない。
ーーーーー
「アザミ……花言葉は独立、報復、厳格、人間嫌い……あと、触れないで、か。分かっているよ、時々一人になりたい時はある。放っておいて欲しい時も。
でもね、ここではきっと良くないよ。君だって本当は、そうしたくないんだろう?」
凍った花が動き、氷を掻き分け砕き割る。凍った花を指先で弾くと、手袋の先を冷気が伝い、表面から氷が粉になって剥がれ落ちた。やや弱ってはいるが、まだ魔力が通る。完璧ではないが、……うまくいっているようだ。
「雪亜麻は冷気に強い花でね、それでもどこまで耐えられるのか不安だったから、手を加えていたんだよ。研究の面もあったけど、君に気兼ねなく触らせてあげたくて……冷気をうっかり強めてしまっても枯れないように、と……まあもう少し、改良がいるかもしれないな」
そうやって、笑ってみせる。
「君を冷たいという人がいる。確かに体は冷たいかもしれない。でもね、君の心は最初から暖かかったよ。不器用でも、君は優しい子だった。
人のように笑ったり泣いたりしない花を、枯れたらかわいそうだと言ってくれた。
何より、自分が傷付くのだって厭わず、何度だって人を助けていた。例え傷が治るものでも、誰かを想う暖かい心がなきゃ、そんなことをし続ける意味がない。
雪亜麻の花言葉は、『あなたに感謝します』……きっと君に感謝している人も、沢山いる。私だって、その一人だ。
……そして今だって、君は私に直に冷気をぶつけないでいてくれる」
制御しきれない冷気が地面を這い、義足が白く染まる。今は、脚が無くて良かったとさえ思う。
「……だからね、君に友達ができたと聞いた時【illust/103228738】、嬉しかったよ。君の優しさに、暖かさに気付いて、寄り添ってくれる人がいたんだって。ねぇ……君は、一人ではないよ。
友達の顔、関わった人たちの顔、どうか思い浮かべて欲しい。……一緒に避難しよう。フロスト君」
「……」
首に掛かったユルメック……通信機を手に取る。
「皆、聞こえているかい……事情はこれから説明するが、フロスト君を助けるために……救援が必要だ。協力してくれるかい?……できれば通信機を持っていない人にも、伝えて欲しいな」
警戒はしている、意識を完全に乗っ取られた時に、自分は備えなくてはならない。今現在、ここではあまりにも色々なことが起きすぎている。どれだけ人が集まるかも未知数だ。
それでも、彼を……どうにかして引き戻さなくては。
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2022-12-17 12:16
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