陛下背負って三千里

⚠️ATTENTION⚠️
オリジナル庭師/オリジナル設定が含まれます！

「運命ッ！！」
それは、誇り高き騎士の悲痛な叫びだった。
そして、愛に溢れた英雄の泣き声だった。

眼前の天使の切り札。
目から発される高熱の視線が陛下の体を焼き切った。

「そこの庭師！運命を頼む！！」
「それは……いいけど！！あんたらはどうすんだ！！」

ボロボロの陛下を担ぎあげながら、嫌な汗が背中を伝う。

この戦線は6人の騎士がいてようやく維持できている。
誰かが欠けたら総崩れになる未来が見えている。

「紫亜、この庭師に付いてやってくれ。
俺らは撤退の時間稼ぎだ……！BLADE！！」

目の前で3人の騎士が『切り札』を切る。

「トリプルジョーカー！！」
「永久幻想『夜鉉』！！」
「ひかりにぃ……なれぇ！！」

一騎当千の騎士たちの全力全開。
流石の巨体もバランスを崩されたか大きくよろめき、その隙をついて離脱する。
が、そう易々と通さないと天使の取り巻きが牙を剥く。

「BLADE、完全模倣再現奥義……」
「BLADE！！黄泉円環比翼煉理……」

目の前に多くの石柱が展開される。
天使の行動が、阻害される。
一本のか細い道が、確かに切り開かれる。

「行って！！」
「陛下を任せたよ！」

だが、足りない。
後方からの光。振り返らない。振り返れない。
あれは先程運命を灼いた死の光。

「にっしし……一番カッコイイとこ、貰っちゃうし！」

隣で笑った、少女は飛んだ。
その手に切り札を携えて。

「『夢に夢見るレイジーガール』！！」

一番の死地は抜け出した。
背中に背負う命は何度も終えては再走している。死亡RTAなんてろくなもんじゃない。
文字通り死ぬほどの苦しみを味わいながら、皇帝は青年に告げた。
「キミだけでも……逃げろ」
「ボクなら大丈夫……死なないから」

後で振り返ると、ここが覚悟の決め所だったのだと青年は思う。

「そうすか、陛下。それは出来ねぇ相談だ」
「庭園いじりしか出来ねぇ庭師が真に英雄になれる機会だ。」

文字通り死地に立って、それでもなお他者を気遣う精神を尊いと感じたから。
神に摘み取られるのが綺麗な花だとしても、自らが地に這う雑草だったとしても───！！

「やらせてくれよ、皇帝陛下！
『雑草』が『花』を助けてやる！！」