翠緑の姫騎士ミューラ~王族護衛編4~

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私とミューラは王座の間へと入り、王と対面することになった。
とは言え、今までに何度も王と直接話をしたことはあるため、今さら緊張するという事はない。
ミューラは私のやや斜め後ろに立ち、私と王の会話に口を挟まないようにしている。

「我々に依頼と聞き、馳せ参じました。今回はどのような依頼でしょうか?」

私が王へ声をかけると、王は控えていた直近の家来である親衛隊の隊長へ視線を向ける。
すると、その隊長と大臣の一人のみを残して他の者達を退室させた。
どうやら余程情報が洩れてはマズい話なのだろう。
我々以外の者達が退出した事を強化した聴力で聞き、無関係の者の気配が玉座の間に存在しない事を私が確認する。

「…我々以外にこの場に誰もいない、な」

私の言葉に小さく頷いてから、改めて王は口を開いた。

「既に気付いていると思うが、この話は極秘となる。今さら『お主らを信用していない』などと言うつもりは無いが、用心して欲しい」
「今回の依頼は、王族の警護…と聞いていますが」
「うむ。我が息子の一人を隣国まで護衛してもらいたいのだ。隣国の姫と婚姻を結ぶために」

隣国との関係は非常に良好であるが、婚姻のために王族が向かうとなれば些細な問題が大きな国際問題に発展することもありえるだろう。
しかも……。

「婚姻を結ぶ王子と言うのは…」
「うむ。我が息子である第三王子だ」
「…市井の間ではあまり良い噂を聞きませんが」

第一王子と第二王子は国を大切に想う誠実な傑物であり、精力的に国内外問わず活躍している事を国民が広く知っている。
特に第二王子とは面識もあり、一度依頼の関係で彼の活動を助けたこともあった。

だが、第三王子だけは話が変わる。良い噂は何一つとして無いのだ。
むしろ悪い噂ばかりが飛び交っていると言っても過言ではないだろう。

曰く、街中で横柄な態度を取り民を侮蔑していた。
曰く、婦女子を無理やり連れ去っていた。
曰く、裏稼業の者達と繋がりがあり、何かを指示していた。

そういった状況については、目の前の王が誰よりも分かっているようだった。

「…分かっておる。奴があくどい事を裏でしていると言う情報も得ておる。だが奴は国家行事に参加している場合のみ外面が良い。今回の婚姻を結ぶための外交も、余程の事が無ければ」
「では今回の婚姻とは…」
「うむ。信頼の置ける者達のみで周囲を固めた状態で奴を他国へ送り出すことで、奴が持つ裏の繋がりを1つ残らず潰す」
「そのため、奴を護衛する者と、裏の繋がりを潰す者の二手に分かれて対応してもらいたい」
「つまりは片方が王子を護衛しつつ動きを牽制し…」
「もう片方が王子の力でもある裏の繋がりを壊滅させる作戦ですね」

私の言葉にミューラも続き、なるほどと納得している。

「奴が何事もなく婚姻を結び隣国へ向かえば、国内との繋がりは激減する。私の信用する部下を監視も兼ねて付ければ、余計な行動はほとんどできまい」
「婚姻を結ぶまでの間に、第三王子が何らかの悪事を企て、実行した場合は?」

私が鋭く質問をする。
場合によっては私やミューラがそれを止める事になるため、対策をきちんと練るためにもこれは聞いておかねばならない。

「可能であれば勾留し、即座に連れ戻してもらいたい。だが、仕出かした事が大きすぎる場合は現場の判断で任せる」
「それは、第三王子を手に掛ける事も含まれる…と考えてよろしいか?」
「無論だ。もちろんその場合、お主らに罪を着せる事もないと約束する。…奴はこれまでも重大な事件を何度も引き起こしかけてきた。国益を無視し、己の欲求を満たそうとばかりな。そんな者を、王族として、そして血の繋がった家族としても許すことはできない」

王が苦しみながらも吐き出した言葉に、親としての想いと、それ以上に国を支える者としての責任を強く感じ取る事ができた。
両拳を強く握りしめて震えていた王は、ゆっくりと息を吐き出し決意の籠った瞳で私へと向き直る。

「これまでのお主らの実績と実力、そして人間性を私は強く信じている。だからこそ、力を貸して欲しい。我が国と隣国の未来のためにも」
「分かりました。この依頼、喜んでお引き受けしましょう」
「私も、ご主人様と同様の気持ちです。必ず王の期待に応えてみせます」
「……ありがとう」

それから私達は細かい日程や報酬についてを事細かく話し合い、帰路に付いたのだった。
第三王子の護送は十日後。
それまでの間に必要な道具の準備をする必要がある。
特に今回は、私とミューラは二手に分かれて単独行動することになる以上、互いにサポートすることはできない。
可能であれば誰か他の者の手を借りたい所ではあったが、こうも急な依頼ではウィンディを頼る事も難しいだろう。
準備の時間はあまりにも少ないが、それでもできる範囲で万全の状態を用意しなくてはならないな。

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皆さん、こんにちは!

ようやく、なんとか本編を投稿です!!(時間がかかり過ぎて申し訳ありません><)
今回のイラスト自体はさほど難しいものでも無かったのですが、
この後の話で作らないといけない部分がどうしても作れずに苦慮していました…。
ですが、ローカル環境でのAIイラストを諦めてPixAIに頼ることで、思った以上に簡単に作成することができました!!
まぁぶっちゃけ、ヒロピン関係のイラストなのですが…(遠い目

私のローカル環境で作成するAIイラストでは、どうしてもその方面のイラストが形にならず困っていました。
やはり時には外部の力を借りる事も大事だと実感しました><

はてさて、今回は国のトップである王直々の依頼です。
果たして今回はどのような苦難が待ち構えているのでしょうか…。
また次回、お楽しみに!!

下記にも他のイラストを投稿しておりますので、こちらも是非とも見てみて下さいね!
◆翠緑の姫騎士ミューラ~王族護衛編4~(1/3)
https://www.patreon.com/posts/123978992

◆翠緑の姫騎士ミューラ~王族護衛編4~(2/3)
https://www.patreon.com/posts/123978993

◆翠緑の姫騎士ミューラ~王族護衛編4~(3/3)
https://www.patreon.com/posts/123978994

また、上記Patreonに投稿したものと同じイラストを、BOOTHでも販売させて頂いております。
Patreonをやるには抵抗がある…と言う方は、是非ともこちらをご利用ください!
※他のAIイラストを販売されている方と比較して、枚数的にお安く設定させて頂いております。
https://izumo-yuuto.booth.pm/items/6677869

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2025-03-10 00:12

 出雲勇斗


Comments (8)

アストレア 2025-03-12 21:34

美しい騎士スタイル、冒険が楽しみです✨

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YZI-ka 2025-03-11 23:12

第三王子はただ利用されるだけの小物としてアッサリ退場しそうな感が…

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op 2025-03-10 20:34

今までと違った色調ですね。5枚目が好きです。 どちらが護衛に付き、どちらが潰しに行くのか、楽しみです。 ミューラにはヒロピン状態になる前に存分に活躍して格好良さを見せて欲しいですね。そのほうがピンチが引き立ちますから

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