古明地心療相談クリニック 25
「新しく入って来た新人がわからないと。」
「ええ先生。そうなんですよ。悪くはないんですが、もうちょっとコミュニケーションがこっちとしては欲しくてですね。」
「ふむ。ですが新人の内は覚えなきゃならない事が沢山<たくさん>あるのでは?」
「それはそうですけど、もっと従業員同士でもこうやり取りって必要じゃないですか。同じ職場の仲間になったんですし。」
「では貴方からそれとなく『どう?』とか『今何調べてるの?』とか話しかけてあげたらどうです?会話のキャッチボールの球を先ずは貴方から投げてみるんです。そこからそれとなく話題を繋げて会話してみたり。」
「でもそれは向こうからでもできますよね?」
「いえいえ。新しく入った職場の先輩方の会話に割って入っていくのはなかなか勇気の要るものですよ?話せる話題でついていけそうでも、その会話の途中からというのは。私も知ってます。私そこの出身なんですよ。とか。何せ先輩方がどういう人なのかもよくわかってないでしょうし。」
「そんなのこっちだってそうですよ。どんな新人なのかなんて。」
「ええ。ですから仕事を教える合間に、何気ない会話のネタから振ってどんな新人なのか探ってみては?仕事の教育や相談からなら少なくとも確実に接点があるわけですし。それに過去グループ分け、派閥のいざこざで酷い目に遭っていればそこは知らない職場で知らない人達です。新しい先輩と親しくなるのに慎重にもなります。」
「・・・・。」
「悪くはないと言っていましたし、慣れるまで少し様子を見てみてはどうです?慣れるのにも個人差がありますし。」
「・・そうですね。わかりました。」
「ではまた何かありましたら。」
そうですね。昔は新人歓迎会とかの飲みの席で掴めたものが、今の時代できないですからね。何でもかんでもハラをつけてハラスメント扱いして自分にとって都合良く相手が悪いとレッテルを貼ってしまう。そんな世代を相手に気の毒とも思いますが、頑張って下さい。
「幻想郷じゃお酒が当たり前なんですけどね。ああ、だから幻想入りしたんでしょうか。次の方どうぞー。」
同じような方ですね。
「今日はどうされましたか?ああ。そのマイクは変声用なので、声を変えて話したい方のプライバシー配慮のものですね。」
「あー、ニュースとかで音声を変えてるやつですか?やたら甲高くなったりする。」
「ええ。」
「先生はそれ聞いて笑っちゃったりしないんですか?」
「大丈夫ですよ。慣れてますから。」
まあ心の声が変わるわけでもありませんし。
「じゃあ、失礼して。あーあーたっかっっ!?大丈夫ですか!?」
「はい。どうぞ続けて下さい。」
「えぇとですね、その、異動先の上司と上手くいかなくて。雰囲気が近寄り難いっていうか、仕事の話も一言二言しか会話がなくて。」
「差し支えなければどういった異動をされたんですか?部署ですか?それとも本店支店ですか?」
「・・・・まあその、いわゆる左遷ってやつで。」
「なるほど。ではその上司の方ももしかすると同じように左遷でしょうか?」
「それは・・はっきりした事は・・。ただ聞いた話だと降格とか。」
「ふむ。つまり会社としては有能と判断しなかった。」
「・・・・恐らく。」
「その上司の方の経歴によりけりですが、世代的には?高度経済成長期ですか?それともバブル崩壊後?」
「え?さあ?・・年齢的にはバブル崩壊後が大卒っぽいですけど。」
「ではその上司の方が新人時代に教育した上司は高度経済成長期、オイルショック経験者でしょうか。そういった世代でしょう。わかりやすい例えですが、とにかく働かないといけない。そう教育されている。仕事を優先しろと。」
「ああ・・そうかもしれませんね。」
「だとすると、ありがちなパターンですが無駄口を叩かない。家族仲が良くない。」
「・・・・。」
「自分の人生に悩んでいるのかもしれません。何十年とこれで働いて来て自分の人生は一体なんだったのか。時代に合わせて会社の経営方針が変わっても、誰もがスイッチのオンオフのように切り替えられません。口数が少ないのは言い合いになってそれが問題視されて降格させられたのかもしれません。なら黙ってしまうのも頷けませんか?」
「・・わかる話ですね。」
「あとは耳が遠くなってきて自然と大声になってしまう。それを咎められたのかもしれませんね。だから黙ってしまう。まあ直接お話しないと解らないところではありますが。そう仮定すると必要以上に近寄らなくて良いと思います。そういう人なんだと割り切って接するしかないと思いますよ。」
「わかりました。それでやってみます。」
「ええ。何かありましたらまた。」
ボフッ
ベッドの上に大の字にダイブ。天井は無機質に今日も白。
「です。心が読めたら良いのにですか。」
お勧めしませんね。わからないからそう思う気持ちはわかりますが。
「隣の芝生は青く見える。見えてしまう見てしまう。羨んでしまう心は誰もが持っていますからね。妬み嫉<そね>み──はパルスィさんの領分ですね。今度はお任せしましょう。」
そうか。この時期は新生活で環境が変化するからそれに伴う相談事が増える。
「忙しくなりそうですか。そうですか。」
「ええ先生。そうなんですよ。悪くはないんですが、もうちょっとコミュニケーションがこっちとしては欲しくてですね。」
「ふむ。ですが新人の内は覚えなきゃならない事が沢山<たくさん>あるのでは?」
「それはそうですけど、もっと従業員同士でもこうやり取りって必要じゃないですか。同じ職場の仲間になったんですし。」
「では貴方からそれとなく『どう?』とか『今何調べてるの?』とか話しかけてあげたらどうです?会話のキャッチボールの球を先ずは貴方から投げてみるんです。そこからそれとなく話題を繋げて会話してみたり。」
「でもそれは向こうからでもできますよね?」
「いえいえ。新しく入った職場の先輩方の会話に割って入っていくのはなかなか勇気の要るものですよ?話せる話題でついていけそうでも、その会話の途中からというのは。私も知ってます。私そこの出身なんですよ。とか。何せ先輩方がどういう人なのかもよくわかってないでしょうし。」
「そんなのこっちだってそうですよ。どんな新人なのかなんて。」
「ええ。ですから仕事を教える合間に、何気ない会話のネタから振ってどんな新人なのか探ってみては?仕事の教育や相談からなら少なくとも確実に接点があるわけですし。それに過去グループ分け、派閥のいざこざで酷い目に遭っていればそこは知らない職場で知らない人達です。新しい先輩と親しくなるのに慎重にもなります。」
「・・・・。」
「悪くはないと言っていましたし、慣れるまで少し様子を見てみてはどうです?慣れるのにも個人差がありますし。」
「・・そうですね。わかりました。」
「ではまた何かありましたら。」
そうですね。昔は新人歓迎会とかの飲みの席で掴めたものが、今の時代できないですからね。何でもかんでもハラをつけてハラスメント扱いして自分にとって都合良く相手が悪いとレッテルを貼ってしまう。そんな世代を相手に気の毒とも思いますが、頑張って下さい。
「幻想郷じゃお酒が当たり前なんですけどね。ああ、だから幻想入りしたんでしょうか。次の方どうぞー。」
同じような方ですね。
「今日はどうされましたか?ああ。そのマイクは変声用なので、声を変えて話したい方のプライバシー配慮のものですね。」
「あー、ニュースとかで音声を変えてるやつですか?やたら甲高くなったりする。」
「ええ。」
「先生はそれ聞いて笑っちゃったりしないんですか?」
「大丈夫ですよ。慣れてますから。」
まあ心の声が変わるわけでもありませんし。
「じゃあ、失礼して。あーあーたっかっっ!?大丈夫ですか!?」
「はい。どうぞ続けて下さい。」
「えぇとですね、その、異動先の上司と上手くいかなくて。雰囲気が近寄り難いっていうか、仕事の話も一言二言しか会話がなくて。」
「差し支えなければどういった異動をされたんですか?部署ですか?それとも本店支店ですか?」
「・・・・まあその、いわゆる左遷ってやつで。」
「なるほど。ではその上司の方ももしかすると同じように左遷でしょうか?」
「それは・・はっきりした事は・・。ただ聞いた話だと降格とか。」
「ふむ。つまり会社としては有能と判断しなかった。」
「・・・・恐らく。」
「その上司の方の経歴によりけりですが、世代的には?高度経済成長期ですか?それともバブル崩壊後?」
「え?さあ?・・年齢的にはバブル崩壊後が大卒っぽいですけど。」
「ではその上司の方が新人時代に教育した上司は高度経済成長期、オイルショック経験者でしょうか。そういった世代でしょう。わかりやすい例えですが、とにかく働かないといけない。そう教育されている。仕事を優先しろと。」
「ああ・・そうかもしれませんね。」
「だとすると、ありがちなパターンですが無駄口を叩かない。家族仲が良くない。」
「・・・・。」
「自分の人生に悩んでいるのかもしれません。何十年とこれで働いて来て自分の人生は一体なんだったのか。時代に合わせて会社の経営方針が変わっても、誰もがスイッチのオンオフのように切り替えられません。口数が少ないのは言い合いになってそれが問題視されて降格させられたのかもしれません。なら黙ってしまうのも頷けませんか?」
「・・わかる話ですね。」
「あとは耳が遠くなってきて自然と大声になってしまう。それを咎められたのかもしれませんね。だから黙ってしまう。まあ直接お話しないと解らないところではありますが。そう仮定すると必要以上に近寄らなくて良いと思います。そういう人なんだと割り切って接するしかないと思いますよ。」
「わかりました。それでやってみます。」
「ええ。何かありましたらまた。」
ボフッ
ベッドの上に大の字にダイブ。天井は無機質に今日も白。
「です。心が読めたら良いのにですか。」
お勧めしませんね。わからないからそう思う気持ちはわかりますが。
「隣の芝生は青く見える。見えてしまう見てしまう。羨んでしまう心は誰もが持っていますからね。妬み嫉<そね>み──はパルスィさんの領分ですね。今度はお任せしましょう。」
そうか。この時期は新生活で環境が変化するからそれに伴う相談事が増える。
「忙しくなりそうですか。そうですか。」
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2025-04-25 20:14
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