【PFT】生存過程【海神の慈悲】
生存を望むなら、
死を逃れる為に妖怪に身を落としましょう。
・・・・・・・・
イズナillust/56466533によって首が落とされた妖怪のアサギを目の当たりにした月詠史郎。彼はアサギが死んでしまったと思い、自分達人間が無実の罪を着せてしまった後悔で悲しんでいた。
【illust/56408314】→【illust/56442198】→【illust/56452763】→【illust/56501691】
・・・・・・・・・
「ごめんなさい、罪の無い妖怪さん。結局は殺す結果になってしまって……」
せめてアサギを弔ってあげようと、アサギの頭を手に取ると、首をはねられて死んだ筈の妖は……!
「あーあ、やれやれ、折角の美女の肉体も潮時みたいだねぇ」閉じていた目を開けて喋り出した。
「ヒイッ!」
月詠が情けない声を上げてアサギの頭を放り出すと、かの妖の頭は軽くバウンドして地面に転がるのだった。
「さっきのお嬢ちゃんの一撃でとどめ刺されて体が駄目になっちまった。なあ、あんちゃん、ここいらで死んだばかりの生き物の死骸を知らないかい? どうやら肉体交換の時期が迫っている様なんだ」
首が落ちた乙女の肉体が、頭部とは別の意志をもってゆっくり起き上がる。
その奇妙な様子を月詠は呆然と見守っていた。
「あっしと似たような輩に死骸を取り込まれてしばらく替えに困っているんでさぁ。こちとら長旅で肉体の損傷が激しくてねぇ。悪いが死体が沢山転がっているだろう合戦場まで連れて行ってはくれねえだろうか?」
なんの妖怪かは本人も詳しくは分からないが、アサギは死んだ生き物の体を借りる事で生存活動を続けている様子だ。依代とする肉体が滅びれば、いずれアサギも滅びて死んでしまうらしい。
戦は新天地の王の間付近で起こっている。激しい戦場に動きの鈍い病人が行けるかどうか、月詠は迷い始めた。戦闘集団であるアオジの民でありながら、あまり戦術が得意ではないのだ。戦場に転がる新鮮な死体を拾いに行く前に命を落とす可能性が高い。
月詠は首を横に振る。アサギとの戦闘で自身も病でかなり消耗している事に気が付いたからだ。
「防腐措置をして、裂け目を縫うのはどうでしょう? 外科手術の心得はありますから、あなたの肉体の修繕は出来ます」
「それはあっしも得意だよ。ただね、死んだ傷口は完全にはくっつかないんだ。もし、ボロボロのまま修繕しても妄執の野郎には一太刀も浴びせられえないだろう」
「あの妖怪はイズナ姉さんに任せて置けば大丈夫です。私達を逃がしてくれた空人魚さんもきっと助かる筈……」
「いや、尼さんが加勢しただけじゃ、恐らくあいつに飲み込まれて往生しちまうだろう。氷菓はだってそんなに強かねえんだ。放って置いたらまずい。時間は迫っているんだ。あっしを合戦場に連れて行って肉体を調達して貰いてえ」
「合戦場に行ってから退治に行くのは効率が悪すぎます。分離した体を塗って修繕した方が早いのでは?」
「うーむ、新鮮じゃないのが気にかかるなぁ」
アサギの肉体の方は頭部を失ったまま緩慢に両手足を動かして動作を確認する。
「あなたの木綿糸では無く、ちゃんとした医療用の糸を使いますから恐らく大丈……!」
月詠が不意に咳き込んで血を吐いた。
「お前さん、長くは無さそうだなぁ……」
首だけのアサギは物欲しそうに月詠を見上げ、見つめる。
月詠は血を掌で拭いながらぎょっとした表情でアサギを見つめ返す。
「私の死を黙って待っていては彼女達も死んでしまいますよ」
「さて、どうしたものか……」
アサギは頭を地面に転がしたまま視線を宙に彷徨わせる。
「あんちゃん、もう一つ選択肢があるんだ、聞いてみる価値はあると思うが、聞くかい?」
「イズナ姉さんと空人魚さんが助かるのであれば」
「あっしと生きたまま同化するってえのはどうよ? 妖怪になっちまうのはしょうがねえ話だが、取り込まれた体は永遠に死にはしやせんぜ」
「え?」
「あんちゃんは残念ながらもうじき死ぬ。その様子じゃあ自分の事をほったらかしで無茶をしたんでございやしょう。顔色はまだ良いが、死相が濃く出ている。死ぬのは明日か明後日か……それとも」
「まだ死ぬわけにはいきません! 故郷の民が苦しめられている病を解明するまでは、生きていなければ気が済まない」
「でも、このままでは死んでしまいやすよ?」
「死にたくない」
月詠は得体の知れない妖に生きたいと強く懇願する。まだ新しい医学の勉強を始めたばかりの自分が志半ばで命を落とすのは許される事では無いと死を踏みとどまった。
「じゃあ、あっしと生きてくれるのかい?」
「はい。私が妖怪になり果てようと、今後救われる民が居るのならそれも本望というもの」
月詠の瞳に迷いは無かった。だが、妖に体を預けるのは少し怖いのか、皮膚が病変した拳を握りしめていた。
「ただ気になる事があって、あなたに肉体を差し出したら、私の魂は抜けてしまうのではないかという疑問が浮上しました」
「心配ありやせんよ。今までも死んだ魂諸共あっしの中でみんな仲良く一緒に暮らしていやす。依代が生きていようときっと上手くいきやすよ」
「それを聞いて少し安心しました」
アサギの体幹部に埋まっていたアサギの核を月詠が受け入れて飲み込む。
瞳から涙が滲むのは妖怪に身をやつしてしまう所為なのか……。
▮自キャラ
アサギ第二形態 illust/56219857
ツクヨミ illust/55775184
二人は共に生きていく事にしました。
アサギはツクヨミの体を共有して生存活動を続けます。
ツクヨミはこれから妖怪として、医学の道を究める様です。
大道のブログ→http://mecuru.jp/blog/tsunamin273/10395
死を逃れる為に妖怪に身を落としましょう。
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イズナillust/56466533によって首が落とされた妖怪のアサギを目の当たりにした月詠史郎。彼はアサギが死んでしまったと思い、自分達人間が無実の罪を着せてしまった後悔で悲しんでいた。
【illust/56408314】→【illust/56442198】→【illust/56452763】→【illust/56501691】
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「ごめんなさい、罪の無い妖怪さん。結局は殺す結果になってしまって……」
せめてアサギを弔ってあげようと、アサギの頭を手に取ると、首をはねられて死んだ筈の妖は……!
「あーあ、やれやれ、折角の美女の肉体も潮時みたいだねぇ」閉じていた目を開けて喋り出した。
「ヒイッ!」
月詠が情けない声を上げてアサギの頭を放り出すと、かの妖の頭は軽くバウンドして地面に転がるのだった。
「さっきのお嬢ちゃんの一撃でとどめ刺されて体が駄目になっちまった。なあ、あんちゃん、ここいらで死んだばかりの生き物の死骸を知らないかい? どうやら肉体交換の時期が迫っている様なんだ」
首が落ちた乙女の肉体が、頭部とは別の意志をもってゆっくり起き上がる。
その奇妙な様子を月詠は呆然と見守っていた。
「あっしと似たような輩に死骸を取り込まれてしばらく替えに困っているんでさぁ。こちとら長旅で肉体の損傷が激しくてねぇ。悪いが死体が沢山転がっているだろう合戦場まで連れて行ってはくれねえだろうか?」
なんの妖怪かは本人も詳しくは分からないが、アサギは死んだ生き物の体を借りる事で生存活動を続けている様子だ。依代とする肉体が滅びれば、いずれアサギも滅びて死んでしまうらしい。
戦は新天地の王の間付近で起こっている。激しい戦場に動きの鈍い病人が行けるかどうか、月詠は迷い始めた。戦闘集団であるアオジの民でありながら、あまり戦術が得意ではないのだ。戦場に転がる新鮮な死体を拾いに行く前に命を落とす可能性が高い。
月詠は首を横に振る。アサギとの戦闘で自身も病でかなり消耗している事に気が付いたからだ。
「防腐措置をして、裂け目を縫うのはどうでしょう? 外科手術の心得はありますから、あなたの肉体の修繕は出来ます」
「それはあっしも得意だよ。ただね、死んだ傷口は完全にはくっつかないんだ。もし、ボロボロのまま修繕しても妄執の野郎には一太刀も浴びせられえないだろう」
「あの妖怪はイズナ姉さんに任せて置けば大丈夫です。私達を逃がしてくれた空人魚さんもきっと助かる筈……」
「いや、尼さんが加勢しただけじゃ、恐らくあいつに飲み込まれて往生しちまうだろう。氷菓はだってそんなに強かねえんだ。放って置いたらまずい。時間は迫っているんだ。あっしを合戦場に連れて行って肉体を調達して貰いてえ」
「合戦場に行ってから退治に行くのは効率が悪すぎます。分離した体を塗って修繕した方が早いのでは?」
「うーむ、新鮮じゃないのが気にかかるなぁ」
アサギの肉体の方は頭部を失ったまま緩慢に両手足を動かして動作を確認する。
「あなたの木綿糸では無く、ちゃんとした医療用の糸を使いますから恐らく大丈……!」
月詠が不意に咳き込んで血を吐いた。
「お前さん、長くは無さそうだなぁ……」
首だけのアサギは物欲しそうに月詠を見上げ、見つめる。
月詠は血を掌で拭いながらぎょっとした表情でアサギを見つめ返す。
「私の死を黙って待っていては彼女達も死んでしまいますよ」
「さて、どうしたものか……」
アサギは頭を地面に転がしたまま視線を宙に彷徨わせる。
「あんちゃん、もう一つ選択肢があるんだ、聞いてみる価値はあると思うが、聞くかい?」
「イズナ姉さんと空人魚さんが助かるのであれば」
「あっしと生きたまま同化するってえのはどうよ? 妖怪になっちまうのはしょうがねえ話だが、取り込まれた体は永遠に死にはしやせんぜ」
「え?」
「あんちゃんは残念ながらもうじき死ぬ。その様子じゃあ自分の事をほったらかしで無茶をしたんでございやしょう。顔色はまだ良いが、死相が濃く出ている。死ぬのは明日か明後日か……それとも」
「まだ死ぬわけにはいきません! 故郷の民が苦しめられている病を解明するまでは、生きていなければ気が済まない」
「でも、このままでは死んでしまいやすよ?」
「死にたくない」
月詠は得体の知れない妖に生きたいと強く懇願する。まだ新しい医学の勉強を始めたばかりの自分が志半ばで命を落とすのは許される事では無いと死を踏みとどまった。
「じゃあ、あっしと生きてくれるのかい?」
「はい。私が妖怪になり果てようと、今後救われる民が居るのならそれも本望というもの」
月詠の瞳に迷いは無かった。だが、妖に体を預けるのは少し怖いのか、皮膚が病変した拳を握りしめていた。
「ただ気になる事があって、あなたに肉体を差し出したら、私の魂は抜けてしまうのではないかという疑問が浮上しました」
「心配ありやせんよ。今までも死んだ魂諸共あっしの中でみんな仲良く一緒に暮らしていやす。依代が生きていようときっと上手くいきやすよ」
「それを聞いて少し安心しました」
アサギの体幹部に埋まっていたアサギの核を月詠が受け入れて飲み込む。
瞳から涙が滲むのは妖怪に身をやつしてしまう所為なのか……。
▮自キャラ
アサギ第二形態 illust/56219857
ツクヨミ illust/55775184
二人は共に生きていく事にしました。
アサギはツクヨミの体を共有して生存活動を続けます。
ツクヨミはこれから妖怪として、医学の道を究める様です。
大道のブログ→http://mecuru.jp/blog/tsunamin273/10395
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2016-04-27 00:02
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