戦艦か？航空機か？　裏切り者に正義の鉄槌を！

仮想戦記的展開

1946年。松岡洋介外相の秘策、日独伊三国同盟にソ連邦を加えた対アングロ・サクソン四国同盟は遂にアメリカ・イギリス・中華民国・オーストラリア・ニュージーランドが加わる対全体主義連合軍に勝利した。
松岡外相はヒトラーとスターリンの思想的対立は結局的には近親増悪である事を看破し、両者を東京の近衛前首相の別荘へ招待。その場で相互に忌憚無き意見を闘わさせた。数日の内に両者は数十年来の知己の様な親密さで語り合う様になっていた。松岡外交の勝利の瞬間だった。

勝利の後、日独伊ソの四国は各々の勢力範囲を決定したが、ここで大きな問題が立ち上がった。
苦闘・激闘の末、イギリス連合王国の植民地から解放したインド亜大陸の去就について日独が激しく対立したのだ。
大日本帝国はインドを満州型の傀儡的親日国家として疑似独立させたかったのだが、独逸第三帝国としてはインドは「アーリア人種揺籃の地」としてその保有を強引に求めたのだ。
ここに至り大日本帝国は己の迂闊さを悔いる事になる。
四国同盟が決裂した場合、独逸第三帝国には伊太利亜王国とソヴィエト連邦が必ず支援につく。
しかも、四国同盟有利とみて途中で参加したフランコ率いるスペイン王国やペタン元帥のヴィシー・フランス共和国も必ず独逸に味方するだろう。
両洋艦隊を壊滅させられた挙句、首都ワシントンに独逸製原子反応弾を撃ち込まれ混乱の極みにある亜米利加合衆国は頼むに足りない。
梟首した挙句、帝国首脳は今上帝の裁可の元、カナダに亡命政権を立てているイギリス連合王国に再同盟を打診する。
交渉は困難を極めたが、チャーチル首相と吉田新外相との間で条約が妥結。第二次日英同盟が発足する。
カナダ亡命中のイギリス軍だったが、国土奪還を目指し死にもの狂いで戦力の充実を図っていた。
戦前に就役していた軍艦の過半数以上を四国同盟に撃ち沈められたイギリス海軍だったが、カナダの造船所を強制的に徴用して既にライオン級戦艦３隻、ヴァンガード級戦艦１隻、ジブラルタル級大型装甲空母２隻からなる艦隊を就役させ、それ以外でも艦船の新造、改造を急いでいた。
だが、帝国海軍は数次における対米艦隊決戦でその持てる艦艇の多くを失い、残存艦艇の修理、改修工事が必要な状況だった。
そこで、吉田外相は山本海相と相談の上、製作工事が滞っている超重爆撃機「富嶽」の機体、エンジン（特に排気タービン系）の設計支援をチャーチル首相に打診。その応諾を得て日本に向かいアブロ、ロールスロイス、ビッカース各社の技師、技術者が日本に派遣される事となった。

明けて1947年初夏。
独逸第三帝国は誓約違反を名目に日本に宣戦を布告。独逸東洋派遣艦隊がインド洋にその姿を見せた。
旗艦は世界最大の巨艦H44型戦艦オットー・デア・グローゼ（オットー大帝）。随伴艦は大西洋航空巡洋艦ヘルマン・ゲーリング（海軍航空隊創設の見返りに自身の名前を付けさせた模様）装甲空母グラーフ・ツェッペリン、重巡ザイドリッツ、軽巡ライプチヒ、軽巡ニュルンベルク、Z52型駆逐艦5隻、大型タンカー2隻からなる大艦隊である。
司令長官はチリアクス海軍大将。

日本海軍の精鋭偵察機彩雲が敵艦隊の状況偵察に向かうが、独逸海軍航空隊が誇るジェット戦闘機Me262Tによって撃墜されてしまう。
だが、吉報は別な場所からもたらされる。
イギリス空軍の高高度型モスキトーが日本海軍航空隊を誘導してくれる事になったのだ。
勇躍発進する野中大佐以下の精鋭爆撃部隊（野中一家の異名を取る）
次々と大空へ飛び立つ「富嶽」達。
その数16機。
整備が難しい上に燃料を馬鹿喰いする超重爆を100機単位で保有する事など土台日本には無理な相談なのだ。
また、超重爆による洋上雷撃が可能な搭乗員となると当然人数が限られてしまう。
高度5千まで上昇すると4機一対の編隊となり洋上へと機首を向ける。

一方、独逸艦隊では
ブー　ブー　注意せよ　注意せよ　未確認に巨大飛行物体が我が艦隊へ向けて接近中。
チリアクス「ふん、恐らく日本人が出て来たのであろうな。アウプヴェーアからの報告によると敵はアミーの超重爆B－36以上の大型機を完成させたと言うじゃないか。だが、所詮は劣等民族が造った機体だ。大方張りぼての機体であろう。恐れる事は無い。我が方には最新式のマイクロ波レーダー・ベルリンB（ベー）がある。しかもこちらは近接磁気信管搭載の5.5ミリ自動機関砲や世界初の対空ミサイル＝ライン・トホター（ラインの乙女）まで装備しているのだからな。さあ、日本海軍の超重爆撃機よ、いつでも来い！精々私を楽しませてくれよ」

野中大佐「よーし、敵影確認。距離凡そ20000といったところだな。全機、雷撃体勢に入る。ギリギリまで高度を下げるぞ。雑巾がけだ！　今までの訓練の成果をみせよ。独逸人に一泡吹かせてやるッ！！」