【PFMOH】見敵同舟/三章装備補足【竜の背】
pixivファンタジア外伝 Mountain of Heaven【illust/87556705】
第三章「天の頂き」【illust/88775451】
険しい山道を二つの影が進んで行く。
「……言っておくが、俺は大した額は持ってないよ」
「今まで襲った奴らの金は?」
「金目当てで襲ったんじゃない」
「へ〜〜〜え」
戦闘支援特化自律式自動人形のI=ヴァニラと、フリーランスの探索者ヴァツニケ。奇妙な行きずりの二人は竜の背を進んでいた。
「霧が出てきたな」
ふと、ヴァツニケが零す。
「視界は良好だ」
I=ヴァニラの観測では現在快晴無風、標高を稼ぐにはまたとない好機である。
暫く行くとまた後ろから声が掛かる。
「日も翳ってきた」
I=ヴァニラは眉を顰めた。
「何が言いたい」
「待ってくれ、本当に暗くーー」
はたと気付いたI=ヴァニラが振り返るのと、ヴァツニケが次の声を上げるのは同時だった。
「そうか!目がおかしいんだ」
振り返った先、深い赤一色の筈の丸い瞳が滲むように空色に変わりつつある。
「ーーサカノメか!」
岩肌が僅かにうろになった部分で、焚き火を灯す。
I=ヴァニラのデータベースでは、瞳の色が反転し視力を奪われるサカノメ症の対処法は目を光から守っての休息だけだった。
「タイムロスだ」
「悪い悪い」
火にあたるヴァツニケは厚い布で視界を覆っている。
「強引について来ておいてこれかい?」
「良いじゃねえか、完全に見えなくなる前に判ったんだから、休む時間も少なく済む」
「いくら軽減出来るか分からないが、平均12時間だ」
「急ぐ理由が?」
「ーーいや。ただ、立往生して気を揉まない方が難しいと思わないか」
I=ヴァニラの脳裏にルースとメディの姿が浮かぶ。ヴィクトルとその弟子ーー驚くべきことに重戦車のような四つ足竜だったーーに護衛されているからともすれば自分達より安全だろうが。今どこまで進んでいるだろうか。
「今のうちに休んでおくさ。どうせ山頂近くなったら眠ることも出来なくなるんだ」
「それは知っている。俺は君たち人族と違ってもともと睡眠が要らないけどね」
「そりゃあ助かる。3時間後に起こせ。治ったかか試してみよう」
軽く言うヴァツニケの触覚が探るように動き続けているのが見える。
おそらく、完全に意識を落とす気など無いのだ。着いて来たことにも未だ思惑があると見るのが当然だろう。
「ーーあんた、鋼の身体なのに生身の病に詳しいんだな」
コートの裾に下肢を収めて丸くなりながらヴァツニケが言う。
「……過去のことだ」
それだけ言うと、I=ヴァニラは白い尾根を眺めていた。
参考:
I=ヴァニラ【illust/88817367】
サカノメ症【illust/88812484】
言及のみ:
聖賢ヴィクトル【illust/88811851】
ルースとメディ【illust/88794810】
台詞監修:
はすま 様【user/11472257】
現在ライフ:♥♥♥
黒曜肢ヴァツニケ【illust/88082000】
第三章「天の頂き」【illust/88775451】
険しい山道を二つの影が進んで行く。
「……言っておくが、俺は大した額は持ってないよ」
「今まで襲った奴らの金は?」
「金目当てで襲ったんじゃない」
「へ〜〜〜え」
戦闘支援特化自律式自動人形のI=ヴァニラと、フリーランスの探索者ヴァツニケ。奇妙な行きずりの二人は竜の背を進んでいた。
「霧が出てきたな」
ふと、ヴァツニケが零す。
「視界は良好だ」
I=ヴァニラの観測では現在快晴無風、標高を稼ぐにはまたとない好機である。
暫く行くとまた後ろから声が掛かる。
「日も翳ってきた」
I=ヴァニラは眉を顰めた。
「何が言いたい」
「待ってくれ、本当に暗くーー」
はたと気付いたI=ヴァニラが振り返るのと、ヴァツニケが次の声を上げるのは同時だった。
「そうか!目がおかしいんだ」
振り返った先、深い赤一色の筈の丸い瞳が滲むように空色に変わりつつある。
「ーーサカノメか!」
岩肌が僅かにうろになった部分で、焚き火を灯す。
I=ヴァニラのデータベースでは、瞳の色が反転し視力を奪われるサカノメ症の対処法は目を光から守っての休息だけだった。
「タイムロスだ」
「悪い悪い」
火にあたるヴァツニケは厚い布で視界を覆っている。
「強引について来ておいてこれかい?」
「良いじゃねえか、完全に見えなくなる前に判ったんだから、休む時間も少なく済む」
「いくら軽減出来るか分からないが、平均12時間だ」
「急ぐ理由が?」
「ーーいや。ただ、立往生して気を揉まない方が難しいと思わないか」
I=ヴァニラの脳裏にルースとメディの姿が浮かぶ。ヴィクトルとその弟子ーー驚くべきことに重戦車のような四つ足竜だったーーに護衛されているからともすれば自分達より安全だろうが。今どこまで進んでいるだろうか。
「今のうちに休んでおくさ。どうせ山頂近くなったら眠ることも出来なくなるんだ」
「それは知っている。俺は君たち人族と違ってもともと睡眠が要らないけどね」
「そりゃあ助かる。3時間後に起こせ。治ったかか試してみよう」
軽く言うヴァツニケの触覚が探るように動き続けているのが見える。
おそらく、完全に意識を落とす気など無いのだ。着いて来たことにも未だ思惑があると見るのが当然だろう。
「ーーあんた、鋼の身体なのに生身の病に詳しいんだな」
コートの裾に下肢を収めて丸くなりながらヴァツニケが言う。
「……過去のことだ」
それだけ言うと、I=ヴァニラは白い尾根を眺めていた。
参考:
I=ヴァニラ【illust/88817367】
サカノメ症【illust/88812484】
言及のみ:
聖賢ヴィクトル【illust/88811851】
ルースとメディ【illust/88794810】
台詞監修:
はすま 様【user/11472257】
現在ライフ:♥♥♥
黒曜肢ヴァツニケ【illust/88082000】
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2021-04-03 10:25
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