【PFSOZ】招かれざる客①
聖夏祭の賑わいがまるで嘘のように、街は静まりかえっていた。
各地で魔物による襲撃事件が多発していたからだ。
人々はやがてやってくるであろう危険から身を隠し、家の扉を硬く閉ざしていた。
志願兵募集の貼り紙が剥がれて風に舞っていた。
嵐の前の静けさに、ハットは少し寒気を感じてコートの襟を引き上げた。
街での必要な用事は片付いたので、足速に家路についた。
ハットは王都の郊外の山の中で、ルナと2人隠れるように暮らしていた。
捨てられた山小屋を改装し、元からそこにある井戸を利用し、電気も近くの電線から拝借して、暮らしに必要な物は一通りそろえてあった。
邪魔する者のいない環境は、自分が画家として絵を描くには申し分なく、ハットはこの生活に幸福感すら感じていた。ヴァラシン組の裏仕事の依頼が来る時以外ではあるが。
たが、最近ハットには悩み事があった。
聖夏祭でルナを助けてくれた少年が、何を思ったのかルナを遊びに誘いに頻繁に来るようになっていた。ルナも同じ様な年頃の子供と遊ぶのは楽しいらしく、笑顔でいる事が多くなり、ハットはその事にも驚きもしたが、気掛かりなのはその少年の事だ。
自分達の様な人間に深く関わり過ぎてはいないかと、その事が気掛かりになっていた。
元来自分は他人の事などどうでも良いと思っているが、何も知らない子供を巻き込むような事は性に合わず、避けたかった。
なのでハットはその少年ミトに対して、いつも突き放す様な冷たい態度で臨んでいた。
これ以上俺達に関わるなとハッキリ言ってもいたが、忌々しい事にこの位の年齢の子供ときたら、大人の忠告とは逆の事をしようとしやがる。
ミトが反抗的な態度でハットを見返す時のあの瞳。あの透き通った輝く瞳で見つめられると、ハットは間違っているのは自分の方であると思い知らされるようで、内心益々苛立った。
ルナにはあの様な子供らしい経験が、精神的成長の為にも必要だ。と、ハットは自分でも分かってはいた。ただ、それによりミトの運命を翻弄するような事にならないだろうか?
ミトだけでなく、様々な歯車が狂い出し、関わった人々全て、ないしはルナの未完成な心までも傷付ける結果になる事だけは避けたかった。そして、そうなって行く未来は必ずしも空想では無いと、そうハットには思えた。
何故ならルナは人間にそっくりなだけのただの人形。
自分がこの手で創り上げた、ただの人形だ、人間とは違う。
家の前まで来た時、ルナとミトが居て、しゃがみ込んでなにやら楽しそうに笑い合っていた。
見ると、アヒルのヒナを何匹か手や頭の上に乗せて遊んでいた。
ハットは一瞬緊張が走りヒヤッとした。ルナは以前小動物を上手く扱えずに、握りつぶして死なせてしまった事があったからだ。
しかしよく見ると、ミトが優しく撫でるやり方を教えていた。
「このくらい、そーっとだよ、シャボン玉に触るくらい、そーっとだよ」
「うん、こうかな?」
「そうそう、その調子」
ルナは可愛らしいヒナを撫でる事が出来て、心底嬉しいようだった。
あんな笑顔になる事が出来るとは、ハットは初めて見るような、心からの笑顔だった。
「あ、ハット!おかえりなさい」
ハットに気付いたルナが駆け寄り、抱きついた。
ハットはルナを下ろして、自分から目を外らし俯くミトに向かって言った。
「お前に話したい事が有る」
ハットは仕草で家に入るようにミトを促した。
②へ続く。
ーーーーーーーーーーーーーー
[登場人物]
ハット illust/102435676
ルナ(金髪も黒髪も同一人物です) illust/102435754
ミト illust/102866465
ヴェラヴェラ illust/103249333
各地で魔物による襲撃事件が多発していたからだ。
人々はやがてやってくるであろう危険から身を隠し、家の扉を硬く閉ざしていた。
志願兵募集の貼り紙が剥がれて風に舞っていた。
嵐の前の静けさに、ハットは少し寒気を感じてコートの襟を引き上げた。
街での必要な用事は片付いたので、足速に家路についた。
ハットは王都の郊外の山の中で、ルナと2人隠れるように暮らしていた。
捨てられた山小屋を改装し、元からそこにある井戸を利用し、電気も近くの電線から拝借して、暮らしに必要な物は一通りそろえてあった。
邪魔する者のいない環境は、自分が画家として絵を描くには申し分なく、ハットはこの生活に幸福感すら感じていた。ヴァラシン組の裏仕事の依頼が来る時以外ではあるが。
たが、最近ハットには悩み事があった。
聖夏祭でルナを助けてくれた少年が、何を思ったのかルナを遊びに誘いに頻繁に来るようになっていた。ルナも同じ様な年頃の子供と遊ぶのは楽しいらしく、笑顔でいる事が多くなり、ハットはその事にも驚きもしたが、気掛かりなのはその少年の事だ。
自分達の様な人間に深く関わり過ぎてはいないかと、その事が気掛かりになっていた。
元来自分は他人の事などどうでも良いと思っているが、何も知らない子供を巻き込むような事は性に合わず、避けたかった。
なのでハットはその少年ミトに対して、いつも突き放す様な冷たい態度で臨んでいた。
これ以上俺達に関わるなとハッキリ言ってもいたが、忌々しい事にこの位の年齢の子供ときたら、大人の忠告とは逆の事をしようとしやがる。
ミトが反抗的な態度でハットを見返す時のあの瞳。あの透き通った輝く瞳で見つめられると、ハットは間違っているのは自分の方であると思い知らされるようで、内心益々苛立った。
ルナにはあの様な子供らしい経験が、精神的成長の為にも必要だ。と、ハットは自分でも分かってはいた。ただ、それによりミトの運命を翻弄するような事にならないだろうか?
ミトだけでなく、様々な歯車が狂い出し、関わった人々全て、ないしはルナの未完成な心までも傷付ける結果になる事だけは避けたかった。そして、そうなって行く未来は必ずしも空想では無いと、そうハットには思えた。
何故ならルナは人間にそっくりなだけのただの人形。
自分がこの手で創り上げた、ただの人形だ、人間とは違う。
家の前まで来た時、ルナとミトが居て、しゃがみ込んでなにやら楽しそうに笑い合っていた。
見ると、アヒルのヒナを何匹か手や頭の上に乗せて遊んでいた。
ハットは一瞬緊張が走りヒヤッとした。ルナは以前小動物を上手く扱えずに、握りつぶして死なせてしまった事があったからだ。
しかしよく見ると、ミトが優しく撫でるやり方を教えていた。
「このくらい、そーっとだよ、シャボン玉に触るくらい、そーっとだよ」
「うん、こうかな?」
「そうそう、その調子」
ルナは可愛らしいヒナを撫でる事が出来て、心底嬉しいようだった。
あんな笑顔になる事が出来るとは、ハットは初めて見るような、心からの笑顔だった。
「あ、ハット!おかえりなさい」
ハットに気付いたルナが駆け寄り、抱きついた。
ハットはルナを下ろして、自分から目を外らし俯くミトに向かって言った。
「お前に話したい事が有る」
ハットは仕草で家に入るようにミトを促した。
②へ続く。
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[登場人物]
ハット illust/102435676
ルナ(金髪も黒髪も同一人物です) illust/102435754
ミト illust/102866465
ヴェラヴェラ illust/103249333
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2022-12-15 20:52
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