【PFSOZ】研究Ⅰ：不死の魂石

これは死の淵に眠る娘を救う手立てを探す、シグフリードの研究の記録である。

魔術の才覚を持たぬ彼は、早い段階より「魔道具を用いる」手段に重きを置いて探していた。
幸い智の最高峰と言えるアラディア院には、あらゆる知識が集まっている。

それは別の大陸のものであっても、他所では調査研究が及んでいないものであっても。

------------------------------------------------------

”不死の魂石(アムブロシア)”

旧き伝承に語られる深海の魔物が持つっていう代物らしい。
それは魂の核であり、不死の力の源であると言う。
炉心のような役割をしており、使いようによっては死の淵にいる娘の生命を繋ぐ事ができるのではないか？

……とはいえ、手にするのは容易ではない。
それを持つ魔物は、かつて何処ぞの海で数多の船を沈めて回っていた、恐ろしく巨大で醜悪な化け物だって言うじゃないか。
討伐隊を率いた名のある聖人も、力の大部分を封じる事はできても、ついぞ殺すことはできなかったらしい。
かつて“竜殺しの英雄”なんて呼ばれた、全盛期の自分ならば…
天が味方すれば、運が良ければ、一欠片くらいならば奪い取って来られたかもしれない。
まあつまり、今の俺には無謀ってこと。

とある筋から手に入れた情報では、もう一匹それを持っている奴がいるらしい。
なんでも、そっちは戦う能力を持たない弱い生き物だとか。
しかしまあ、なかなかそう美味い話もないもんで。
噂を嗅ぎつけて狙ったハンターなんかは尽く返り討ちに遭い、無残な板切れと化した船の残骸に掴まってどこかの浜に流れ着くのがオチなんだと。

それで、いつからか言われるようになったそうだ。
『かの海域で山羊の幻想種を目にしても、けして関わってはならない。
深淵に目を凝らす事なく、速やかに舵を取れ。海の赤さに気付いてしまう前に。』ってな。
さあ、どういう意味だろうね。

兎にも角にも、これはやめておこう、死に急ぐようなもんだ。
そもそも、俺は泳げないんだよ。

------------------------------------------------------

シグフリードは資料を束ね、深く息を吐きながら、すっかり固くなってしまった肩を揉む。
深海が駄目でも、同じく神秘のヴェールに包まれた場所は陸地に幾らでもある。
例えば──

✧

郷愁のシグフリード【illust/102272449】

深海の魔物【illust/79374365】

アラディア院に来てから今日までの数十年間のどこかの話です。
最終章が…始まっているのに…？
聖夏祭にいたため最終章は王都で戦ったり助けたりしてると思います。

Pixivファンタジア Scepter of Zeraldia【illust/101965643】